医師の育成プロセス:医学部の授業内容や研修医制度の仕組みを解説
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診療報酬制度の仕組みと課題

公的医療保険制度のもとで医療機関が行った医療サービスに対して、保険者から医療機関に支払われる報酬を「診療報酬」といいます。支払い対象となる医療サービスの範囲と報酬額は、健康保険法に基づいて診療報酬点数表として示されています。診療報酬点数表は、厚生労働大臣が中央社会医療協議会に諮問して告示します。この仕組みを診療報酬制度といいます。

社会保障費を圧迫

診療報酬点数表は、医科診療報酬点数表、歯科診療報酬点数表、調剤報酬点数表の3つに分かれています。これらでは、保険医療機関や保険薬局で行われる医療サービス(診療、検査、投薬、リハビリ、処置、手術、調剤、服薬指導、薬歴管理など)を数千項目にわたって細かく分類し、それぞれについて単価を定めています。

保険医療機関や保険薬局では実施した医療サービスの診療報酬点数を患者ごとに合算し、点数1点を10円として計算して計算した金額から患者負担分を差し引いた金額を審査支払い機関に請求します。請求を審査して問題のない場合、審査支払機関が診療報酬を支払います。

診療報酬と薬価基準は原則として2年ごとに改定されます。80年代、国民医療費が財政を圧迫していることから、国民医療費の抑制が基本政策となり、被用者保険の加入者本人の1割負担が導入されました。その後も負担割合の引き上げが続き、診療報酬も据え置き、または減額が繰り返されました。2000年代は、社会保障費を毎年2,200億円削減したほか、診療報酬もマイナス改定が続いたため、多くの医療機関の経営が悪化し、倒産や廃業が急増しました。

日本の診療報酬制度は、医療機関が実際に行ったサービスの項目と数量に応じて報酬が支払われる「出来高払い方式」を基本としてきました。実際に診療に要した費用が支払われるので、治療費の未収の心配がないというメリットがあります。その反面、医療サービスを増やせば増やすほど、支払いが増える仕組みでもあるため、過剰診療を招きやすいという批判もあります。

このような弊害を避けられるとされるのが、一連の医療サービスを一括りにして評価し、疾患ごとに定められた入院1日あたりの医療サービスの費用に基づいて、患者の入院日数に応じた診療報酬を医療機関に支払う「包括払い方式」です。

この方式では、定められた費用の範囲内で工夫して診療が行われ、無駄な投薬や検査が減ることが期待できます。しかし、医療機関は医療サービスを抑制すればするほど、その差額が利益となるため、本当に患者が必要と磨る検査や治療が受けられなくなり、医療の質が低下するのではないかという声も聞かれます。

2003年から段階的に、急性期入院医療を実施する医療機関を対象に、包括払い方式を基本としたDPC(診断群分類包括評価)と呼ばれる診療報酬の評価制度が導入されました。この方式は入院1日あたりの定額払いですが、手術料、増す医療、高額な薬剤量などは出来高払いが併用されています。