医師の疲弊の要因となる当直勤務の実態
病気や怪我は昼夜、日曜・祭日と時間を選ばずに起こりますので、これらの患者を受け入れる病院は夜間にも医師が必要となります。夜間や休祝日に病院で勤務して、入院患者の急変への対応や、外来・救急患者の診療を行うことを「当直」といい、患者さんの入院体制が整備された施設では医療法制によって、24時間体制で医療を提供する、つまり医師が当直して診療を行うことが規定されています。
当直は「宿直」と「日当直」の2つに分類されることがあります。通常の診療を終えた夜間帯に勤務するのが「宿直」に該当し、休日や祝日など通常の診療時間外で、なおかつ日中に勤務するのが「日直」となります。
夜間や休日に勤務する医師であっても、通常は日中の診察を担当しているため、当直は交代制で担当することになりますが、医師が不足している産科・救急などの診療科では、1ヶ月あたりの当直回数が日中の診療に支障をきたすほど増えるところもあり、医師が疲弊する大きな要因となっています。
宿直の許可基準には「夜間に十分睡眠がとりうる」という項目が規定されていますが、病院や診療科によっては、「十分」な睡眠どころか、全く眠れないところもあり、本来の「宿直業務」の規定が形骸化しているケースもたたみうけられます。さらに「原則として、通常の労働の継続は許可しない」とされているものの、勤務医の多くは、当直明けでそのまま日勤に入っています。日勤で手術を担当する外科医が、当直を挟んで40時間以上の連続勤務を行っているケースもあります。
医師を確保して当直を回すためにスポットのアルバイト医師を採用している医療機関も少なくありません。当直のアルバイトは、従来、研修医にとって数少ないまとまった収入源のひとつとなっていましたが、患者に提供する医療の質が低下するという批判があったため、研修医のアルバイト当直は禁止となりました。