医師が活躍する病院・クリニック以外の職場
医師が活躍できる場所は病院やクリニックだけではありません。専門領域の知識を臨床開発分野に役立てたいと製薬企業で働いている医師もいますし、民間企業で産業医として社員の健康管理に携わる人、高齢者の訪問診療を行ったり、医系技官として官公庁で働く人もいます。
また医師の勤務先として一般的な病院も目的はさまざまです。高度治療を要する病気を診る大学病院あれば、地域住民の日常的な病気を対応する総合診療科まで、活躍の場は幅広いのです。ここでは医師の働き方のいくつかの例を紹介しましょう。
大学病院は最新の医療機器が揃っており、高度な治療技術を有した医師がいるため、地域の病院から治療が困難な患者さんを受け入れる地域の中核病院としての役割があります。治療の場であると同時に大学病院は、医学生や若手意思を育てる教育の場でもあるため、医師は診察のほかにも、研修の指導も行っています。また最先端の研究を医療現場に活用するため、ボランティアの方の協力のもと新薬の治験も行っています。
労働者の健康を守る専門医のことを「産業医」といい、従業員が50人以上いる企業や向上ではその配置が法律で義務付けられています。職場での作業や労働が健康に負担をかけていないか、業種特有の病気や怪我を予防できる体制にあるかなどを医師の観点からチェックを行ったり、勤務中に起こった心身の不調への対応、健診の結果を見たりします。メンタルヘルスの問題を抱えている社員が増えており、うつ病などの休職からの復職判定を行うことも産業医の重要な業務です。
自宅や施設などで療養している患者さんを支援する医療を「訪問診療」といい、高齢化が進み、病院以外の場所で診療を受ける人がますます増えるとされるなか、その重要性が高まっています。訪問診療医は、診療計画にしたがって訪問看護師とともに、患者さんの元を訪問します。
山間部や離島、人口の少ない過疎地などの僻地では、採算性の問題から大きな病院はなく、診療科も限定されがちです。また僻地では、病状が悪化してもすぐに救急病院へ搬送することができません。そのため僻地医療に携わる医師には、病気全般を診るだけでなく、病気の予防や体調管理に重点を置いたケアを行うことも求められます。