医師の育成プロセス:医学部の授業内容や研修医制度の仕組みを解説
*

医療スタッフが専門性を生かして患者をケアするチーム医療

医療機関のスタッフ、すなわち医師や看護師、薬剤師、臨床検査技師、放射線技師などが、それぞれの職業の専門性を活かし、患者の治療に必要な情報を共有し、協業を行うことで、的確な医療を提供することを「チーム医療」といいます。

診療前のカンファレンス

患者の権利が広く主張され始めた80年代以降は、患者を全人的にとらえた医療が求められるようになりました。また、医療技術の進歩・高度化に比例して、医療の専門分化が進みチーム医療の必要性が高まりました。がん治療などの高度先進医療、療養型医療においても、患者の心理面や社会面までかかわって、患者主体の医療を進めることを目標としています。

近年、クリニカルパス(疾患ごとに患者が受ける治療、検査、看護、リハビリなどの標準的な内容とスケジュールを記した計画書)を導入する医療機関が増えてきましたが、医療スタッフ間の情報共有に役立ち、チーム医療の推進に役立つものと評価されています。

チーム医療の推進と共にその役割に大きな広がりを見せているのが、薬剤師です。既に医療現場では、チーム医療を具現化するために栄養サポートチーム、緩和ケアチーム、褥瘡対策チームなどの組織が作られ、薬剤師が加わり専門性を発揮しているほか、リスクマーネージャーとして医療事故防止に向けた業務にも従事しています。

このほか薬局薬剤師と病院薬剤師とが情報・意見交換を行うことや、信頼できる医薬品情報の収集、評価して他の医療スタッフに届けることもあります。EBM(根拠に基づく医療)を進めるうえで薬剤師が担う重要な役割となっています。

医療法の改正によって、薬剤師や医師や看護師と共に医療の担い手と位置づけられ、調剤を実施する薬局は地域医療における医療提供施設としての役割を担うことになりました。また医療人としての薬剤師を育成するために薬学教育6年制もスタートしました。チーム医療の一翼を担う薬剤師の責任は大きく、病院の配置基準の見直しなど薬剤師業務の拡大に見合った条件整備も欠かせません。